▼ メディア掲載情報
- 日刊レコード特信(2015年8月6日号)
- 連合通信レコード速報(2015年8月7日号)
- 映像新聞(2015年8月10日号)
- ORIGINAL CONFIDENCE(2015年8月17日号)
- MJ 無線と実験(2015年12月号)
- ㈱音元出版のAV/オーディオ/ガジェット情報サイト「Phile-web」(2015年8月10日版)
- Gaudio+PCオーディオfan(2015年8月10日版)
- KK KYODO NEWS SITE(2015年8月10日版)
- 話題の情報を発信するサイト OVO[オーヴォ](2015年8月10日版)
- オーディオ・ビジュアルのポータルサイト「Stereo Sound ONLINE」(2015年8月10日版)
7月の上旬、サウンドインのBstにて、伊藤慧「ブルクミュラー」のレコーディングが行われました。メインフロアの向かって右側にスタインウェイのフルコン(D-274)をセッティングし、広い空間に向かって蓋を開けます。スタジオの自然な響きを録るため、オンマイクもアンビエンスマイクもペアで2種類ずつ、合計8本のマイクが立てられました。アンビエンスマイクには、ペアを離してセッティングしたB&K 4006がダイアフラムを天井に向けて、2本を近くに並べてセッティングしたNEUMANN U87Aiはダイアフラムを床に向けてあります。これらのマイクの音がどう聴こえるのか、楽しみにしてコントロールルームへ。そして、ラージスピーカーで聴いた音は、音の粒はきちんと見えつつも、自然な響きがあり、ホール録音とは違う、スタジオ録音ならではの絶妙なバランスです。(後日エンジニアに聞いたところ、実際はオンマイクはほぼ使っていないとのことでした。)
伊藤さんのピアノは、女性のわりに力強く、「アラベスク」や「タランテラ」「バラード」のようなブルクミュラー独特のリズムやスタッカートがはっきりしていて楽しくなります。それでいて「羊飼いの家路」「スティリエンヌ」のトリルは可愛らしく、「子守唄」や「ゴンドラ漕ぎの歌」の静かに流れるようなメロディーは、おだやかでやさしい音色でした。聴いていくほどに、ブルクミュラーの曲ってこんなにバリエーションがあって楽しいんだ!と再確認できます。そして、昔ブルクミュラーを弾いたことのある人ならば、また楽譜を引っ張り出してきて、弾きたくなることは間違いなしです。私も聴きながら、ついつい指を動かしてしまいました。この作品は、ピアノという楽器の聴く楽しさも、弾く楽しさも、どちらも再確認できるアルバムと言えるかもしれません。
そして、レコーディングの後半は、クラリネットの齋藤雄介さんと二人での録音です。ピアノの隣、アンビエンスマイクでピアノとクラリネットのバランスが取れる位置で録音していきます。ピアノのソロとはガラリと雰囲気が変わり、二人でニュアンスなど話し合いながらの録音になりました。面白かったのは、今回のレコーディングの間に、伊藤さんが曲や音の印象を色に例えてお話されていました。サウンドインのBstの音はオレンジ色で、クラリネットの齋藤さんの音は緑色(齋藤さん自身の印象も緑なんだそうです)、曲についても「アラベスク」は紫色、「スティリエンヌ」はトリコロールカラー、などといった感じです。今回の収録曲の色を一通り聞いてみると、なんとなくイメージは分かる気がします。この曲は何色かな?とイメージしながら、聴いてみるのも面白いかもしれません。このアルバムに収録されている曲たちはどれも1度は聴いたことのある、ピアノを習っていた人ならば、「あー!これ子供のときに弾いた!」と懐かしくなる曲たちです。そんな馴染み深い曲ですが、こうして、伊藤さんのすばらしい演奏を、スタインウェイのフルコンで、高音質なハイレゾ録音で、改めて聴いてみると、その完成された芸術性に気づかされます。試聴して「あー、あの曲ね。」とスルーしてしまうのは、もったいないですよ。